「あんさん、これから東の方に行かはるんどすか?」
(そうですけど?)
「もう日も暮れてますえ、どこに行かはるんですか?」
(いや、ちょっと・・・)
「八坂さんの塔の方? 清水さんどすか?」
(いや、そっちの方では無くて、ちょっと別のものを探しているんです。)
「そうどすか、ようわからへんけど、暗い小路の方は気ぃつけておくれやすや。」
(? なぜですか?)
「だって、日ぃ暮れてからの小路は、何が出るかわからへんよってに。」
(ははは、大丈夫ですよ。お化けが出るわけじゃあるまいし、電灯もついてるし。)
「出ぇへんと思てはります? ここはもう千年以上も前から姿を変えずにある場所どすえ? 何もないのに、そのままの姿が今に残っていると思わはりますか?」
(えっ?)
「災害や、何やら、色々なものがあるのに、ここは昔のまんまどす。それは、人間以外の何かがこの辺を守っとるからって、お母さんが言うてはるのよ。」
「だから、なんかがおはるんどす。でもその中には、悪い子もおるから・・・」
(・・・なるほど、では出来るだけ明るいところを歩いたほうが良いですね。)
(ところで、何を探していはるんどす?)
「あぁ、ちょっと恥ずかしいんですけど、それは・・・」
(『ゆめ』なんです。希望、とも言うのかな。)
(つづく)